REPORT
活動報告
第221回国会 参議院 予算委員会 第5号 令和8年3月19日
○佐々木雅文君 公明党の佐々木雅文でございます。
今日は、これまで政府が進めてきた司法制度改革ありますけれども、その一環である損害賠償、特に慰謝料額の適正化について伺ってまいりたいと思います。
損害賠償請求は、様々な不法行為を原因となって請求をするものでありますけれども、従前から、特に人格権侵害、例えば名誉毀損であったりとかプライバシー侵害、こうしたことが問題となってまいりました。
〔理事長谷川岳君退席、委員長着席〕
私自身もこうした分野に元々関心がありまして、弁護士を目指そうといたしました二〇〇〇年代初頭また前半の頃というのは、いわゆるマスメディアと言われる媒体が情報発信の中心だったわけであります。
私の記憶では、当時は、そうした媒体が仮に名誉毀損事象を起こしてしまって、被害者側が損害賠償を提起して、仮にその請求が認容されたとしても、その認容される金額というのはおおよそ百万円台ということで大きくなかった、そうした実態もあったかと思っております。そうした意味では、ある意味では、そうした内容を、事象が生じたとしても相手にしないというのが大人の対応である、そういう風潮が当時はあったというふうに記憶しています。
ところが、昨今はSNSの普及もありまして、マスメディアに限らず個人も情報発信が可能となりました。そして、インターネット上の誹謗中傷事案も増えているというのが今の現状だと思います。そうした状況下で、今ではそうした事案に対して無視をするんではなくて、むしろ、うそやデマをきちんと正していくということが適切な対応だ、そういう時代背景になっているわけでございます。そうした意味でも、人権侵害に対する深刻さ、また重大さというのが広く認知されるようになってきている、そうした状況下にあると思っています。
そうした中で、昨年、情報流通プラットフォーム対処法が施行をされました。施行前の令和六年は、発信者情報開示命令事件の受理件数は、裁判所における新件受理件数、全国で六千七百七十九件でした。それが、令和七年、情プラ法が施行された去年の四月以降ですけれども、その上で、令和七年は速報値で受理件数が約一万件となっています。既に約三千三百件増えている、こうした状況にあります。費用を掛けてまで開示手続をする理由というのは、投稿者を特定して、投稿の削除であったりとか、また名誉を回復していくために損害賠償請求を起こす、こうしたことが大きいかというふうに思います。
しかしながら、SNSにおける人格権侵害等の不法行為による損害賠償額、慰謝料額、これも決して高くなっていない状況があります。十分に精神的損害に対する回復がされていないんじゃないかという指摘、問題提起がされています。名誉を毀損されたりプライバシーを侵害されたりして、また誤った情報が流布されたとしても、慰謝料額が数十万から百万円台ということであれば、一般の市民感覚に照らしても低いと言わざるを、低いレベルにとどまっていると言わざるを得ません。
国としても、こうした指摘、問題提起、どのように把握、認識をされているか、大臣の所見を伺います。
○国務大臣(平口洋君) お答えいたします。
インターネット上の誹謗中傷等の損害賠償請求訴訟において、裁判所で認められる損害賠償額が低廉であるという指摘があることは承知をいたしております。
他方で、損害賠償額は裁判所が個別具体的な事情を踏まえて判断する事柄でありまして、裁判所の個々の判断について政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。
一般論としては、誹謗中傷等の被害者が被った不利益が十分に補填されるだけの適切な損害賠償額が認められることが重要であると考えております。
○佐々木雅文君 そのような指摘もある中で、既に二〇〇一年には司法制度改革審議会から意見書が提出をされています。
その中でも、損害賠償の額の認定については、全体的に見れば低額に過ぎるという批判があることから、必要な制度上の検討を行うとともに、過去のいわゆる相場にとらわれることなく、引き続き事案に即した認定の在り方が望まれるというふうに既に意見が出されています。
こうした意見書が出されて以降、被害救済を実効化していくために、これまで国としての何らかの研究調査、分析はされているのかどうか、伺います。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
法務省においては、御指摘のような批判等も踏まえ、インターネット上の誹謗中傷等に関する損害賠償請求訴訟について、公開されている裁判例を収集し、認容された慰謝料の額の動向や、その算定においてどのような要素が考慮されているか、また発信者情報開示請求等において要した弁護士費用等が損害額としてどの程度認容されているかなど調査を行っているところでございます。
今後、その調査の結果が取りまとめられた時点で、法務省のウェブサイト等で公表する予定としております。
○佐々木雅文君 ありがとうございます。是非そうした調査研究の結果は公表していただきたいと思いますし、現状をしっかり共有していくことがその慰謝料額を適正化していくための第一歩になると思います。
その上で、そうした知見を踏まえまして、特に民法の不法行為を始めとする民事の損害賠償の分野において、中でもこうした人格権などの損害賠償額を適正な水準にしていくために、今後、法改正やまた法制度の創設など、国としてどのような対応策、制度設計を検討しているのか、この点についても伺います。
○政府参考人(松井信憲君) お答え申し上げます。
先ほど申し上げたとおり、調査の結果については法務省のウェブサイト等において公表することを予定しており、その結果はインターネット上の誹謗中傷等に関する損害賠償請求訴訟に携わる弁護士等の実務家に広く御活用いただきたいと、そのように考えているところでございます。
法務省としては、まずはその調査結果の周知に努めてまいりたいと考えております。
○佐々木雅文君 ありがとうございます。そうした周知をしていくこと、そうした共有をしていくことも大変大切なことだと思います。
その上で、私は、実際の精神的苦痛をきちんと回復していくという観点からも、また、今申し上げたようなインターネット上の誹謗中傷も含めた不法行為の抑止という観点からも、適切な慰謝料額が認められていくべきだと考えています。
この点、二〇二二年に日本弁護士連合会が慰謝料額算定の適正化を求める立法提言を採択して、民法の改正によって慰謝料額を適正な水準に増額させる方策を提言をしています。
具体的には、慰謝料額算定に当たっての考慮すべき事由を法文上で例示的に列挙をし、裁判所の裁量で適正な額を算定し得る措置を行うものです。民法七百十条を改正して、第二項を新設する。その考慮要素として、侵害行為の態様、また故意又は重大な過失の有無、侵害された権利又は法律上保護される利益の性質、当事者の関係などといった考慮要素を明示するという内容となっています。
これであれば、日本の法体系とも無理がないですし、また当事者に予見可能性を与えるものにもなります。また、既にこういう考慮要素を盛り込んだ例もあるという状況でもあります。
慰謝料額の適正化という趣旨が共有されることによって、算定実務の見直しも見込まれます。冒頭申し上げましたとおり、今の時代において、SNSが媒体の中心になっていて、その進化も加速度的となっています。また、残念でありますが、それに合わせて人格権侵害も生じている現状でありますから、立法事実も存在していると思います。
こうした様々な提言も含めまして、法制度の改正、改革によって、損害賠償額、具体的には慰謝料額の適正化を実現するために国に十分な取組を求めたいと思いますが、所見を伺います。
○国務大臣(平口洋君) 法務省としましては、まずは裁判例の調査を進めるということが適当であると考えておりまして、現時点で法改正の見込みについてコメントすることは困難でございます。
もっとも、その提言のほか、インターネット上の誹謗中傷等の損害賠償請求訴訟における慰謝料額について様々な御指摘があることは真摯に受け止める必要があると考えております。
現在行っている裁判例の調査に加え、今後、どのような取組をしていくかについてはしっかりと検討してまいりたいと考えております。
○佐々木雅文君 ありがとうございます。是非、しっかり引き続き十分な検討をしていただきたいと思っております。
先ほど申し上げましたとおり、二〇〇一年には既に司法制度改革の意見書が提出をされておりました。それから既に四半世紀がたっています。また、当時と違って、これ誰もがその当事者、加害者側にも被害者側にもなる、こうした立法事実もありますので、十分な取組を求めまして、質疑を終わります。
ありがとうございました。