REPORT
活動報告
第221回国会 参議院 本会議 第23号 令和8年6月19日
○議長(関口昌一君) 佐々木雅文君。
〔佐々木雅文君登壇、拍手〕
○佐々木雅文君 公明党の佐々木雅文です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして質疑を行います。
今般、再審制度に関する刑事訴訟法の改正がこうして議題となるまでに、超党派の議連の皆様を始め多くの方々が力を尽くされてきたことに心よりの敬意を表するものです。だからこそ、この参議院において、冤罪被害者を確実に救える制度をつくることが重要ではないでしょうか。
私は、二〇一二年に弁護士に登録しました。以来、当番弁護、国選弁護を中心に、刑事事件の弁護人としての活動も行ってきました。その実感も踏まえ、質疑を行います。
刑事弁護活動の大きな難点、それは圧倒的な情報の非対称性です。被疑者を勾留するとともに、捜索差押え、第三者の供述を得ることなど、様々な証拠の確保が可能な点で、捜査機関側が有利です。しかし、通常審においても捜査機関への証拠の偏在があるにもかかわらず、再審では請求人に証拠の新たな発見を求めるという高いハードルを課しています。
この点、これまでの再審事件においては、捜査機関側から裁判所に未提出だった証拠が開示され、多くの社会的関心を生む中で、様々な視点からの検証がなされた結果、無罪判決につながっています。ですから、必要十分な証拠が開示される手続が不可欠です。他方で、これまでは、証拠開示に関する明文規定は乏しく、ある意味で属人的な対応となっていたことは否めません。
そこで伺います。
まず、今般の改正目的の一つは、再審請求者の手続保障の充実化です。その一環として、再審手続が始まる前に調査手続、スクリーニング規定を設けるとのことです。その規定は、再審の請求が理由のあるものであることが明らかであると認める場合には再審開始の決定がされるという簡潔な内容となっています。しかし、これではかえって判断過程が不透明になるおそれがあります。再審請求者の手続保障に資するものなのか、高市総理の明確な答弁を求めます。
もう一つの改正目的は、誤判からの確実な救済の実現です。そのためには、事実を明らかにする証拠へのアクセスができなければなりません。
提出された法律案における証拠の提出命令制度は、本則で関連する証拠に限るとしていますが、他方、附則では、その範囲が不当に狭くならないように留意するとしています。それであれば、そもそも本則で関連性という要件を外すべきではないでしょうか。
また、改正案ではスクリーニング規定が設けられ、一定の請求理由があると再審が認められるということは、その時点で有罪認定をした証拠構造に疑義があると判断されるわけです。にもかかわらず、改めて証拠開示に関連性を規定する立法事実はあるのか、高市総理の明確な答弁を求めます。
先ほど申し上げたとおり、これまでの再審事件においても、未提出だった証拠の吟味、検討を経て無罪判決につながっています。また、単に未提出だったわけではなく、裁判所が有罪と認定するために意図的に提出していなかったと考えざるを得ない事案もあります。再審請求段階でも、当初は存在することを認めていなかったり、警察から検察に送られていなかったりする証拠もあります。この点、検察官の証拠開示の姿勢に問題があることとともに、そもそも検察官側でも、警察が保管、管理する記録や証拠の整理、把握ができていない可能性も指摘されています。
そこで、あかま国家公安委員会委員長に伺います。
現場を担当する警察は、当該事件において作成、収集、保管している書面や証拠物について、検察官への送致の有無にかかわらず、また一覧表、目録等の名目のいかんは問わず、証拠等の管理のための情報をまとめているかどうか、仮にそうした管理体制が整っていないのであれば、どのように管理しているのか、また、そうした情報を全て検察官に提供しているのか、それぞれ御答弁ください。
精密司法と呼ばれるような日本の刑事手続を全て否定するつもりはありませんし、警察や検察などの捜査機関が日夜努力されていることには敬意を表します。また、その結果、高い有罪率を保っていること、その前提として、そもそも公判を維持できない場合には不起訴にしているものと承知しています。そして、起訴という終局処分をするに当たっては、有罪とするだけの証拠が足りていることを前提に、証拠構造を幾重にも判断しているものと思います。
それであれば、公判未提出の証拠を開示することにちゅうちょする理由はないのではないでしょうか。少なくとも、警察と協力して獲得証拠の一覧表を作成すること、そして再審決定時には開示すべきではないでしょうか。改正案では、そもそもスクリーニングをパスすることが前提になるとともに、現行法でも通常審において一覧表の提示に関する規定があることからも、不利益は生じません。平口法務大臣の所見を伺います。
加えて、仮に証拠が開示されるに至ったとしても、提出された改正案においては、通常審と同様に、目的外使用を罰則付きで禁止することとしています。しかし、政府は、衆議院での議論においても一貫して、再審の職権主義的構造を理由に、証拠開示の範囲を限定しようとしています。それであれば、当事者主義的構造の通常審を踏まえることは整合しません。
また、これまでの再審手続において、証拠の目的外使用を罰則付きで禁止しなければならないような立法事実は生じていません。罰則付きで禁止することは明らかに行き過ぎではないでしょうか。
規定を設ける根拠となる事実があるのか、平口法務大臣の所見を伺います。
再審開始決定に対する検察官の不服申立ての在り方については、この改正案では、原則禁止、例外的に十分な根拠がある場合に限り不服申立てが認められるという内容となっています。しかし、刑事弁護に携わってきた者としては、例えば裁量保釈の歴史などを踏まえると、刑事訴訟法の規定とは別に、実際には原則と例外が逆転した運用がなされてきたという経験則があります。
そこで、高市総理に伺います。
これまで現行法下でなされてきた再審開始決定における不服申立てにおいても、検察官は根拠があって抗告をしてきたのではないでしょうか。仮に根拠がなければ一層問題です。しかし、そうであるのならば、この改正案では、これまでと同様に抗告が行われることになりますし、再審の長期化を防ぐことにはならないのではないでしょうか。
今般の法改正で、これまでの実務の運用は何が変わるのか、高市総理の明確な答弁を求めます。
そもそも、今回の再審制度を中心とした刑事訴訟法を改正するに至った背景は、幾つもの案件で証拠の捏造等が発覚していることです。大変ゆゆしきことですし、構造的な問題があると言わざるを得ません。
警察においては、国賠事案も含めて、証拠の基となるデータ等の捏造が指摘されたり疑われたりする事案が散見されています。また、検察においても、そもそも起訴自体に問題があったと判断をされている事案も発生しています。
そもそもあってはならないことですし、冤罪を生まないための徹底した取組が必要です。また、その前提として、例えば第三者の観点も含めた検証を十分に行うことも考えなければなりません。
再発防止に向けた具体的な対策がなされているのか、平口法務大臣及びあかま国家公安委員会委員長の所見をそれぞれ伺います。
公明党は、冤罪被害者を真に救済するために一層努めていくことを申し上げまして、質疑を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣高市早苗君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(高市早苗君) 佐々木雅文議員の御質問にお答えいたします。
いわゆるスクリーニング規定についてお尋ねがございました。
本法律案におきましては、再審の請求を受けた裁判所においていわゆるスクリーニングを行うこととしており、調査の結果に基づいて、例えば、再審請求に理由があることが明らかな事件については、調査手続の段階で再審開始決定を行うことにより誤判からの速やかな救済を図ることとした上で、再審請求理由についての審理を経た上で終局決定をすべき事件については、再審請求者側の手続保障をより充実させることとしております。
このように、本法律案におけるスクリーニングは、誤判からの速やかな救済と再審請求者側の手続保障の双方に資するよう導入されたものであり、判断過程が不透明であるという御指摘は当たらないと考えております。
証拠の提出命令制度における関連性の要件についてお尋ねがございました。
再審請求審は、裁判所が再審請求者の主張する再審請求理由について審理、判断する手続です。したがって、御指摘のいわゆるスクリーニング規定を設けるか否かにかかわらず、証拠の提出命令の対象となる証拠は、再審請求理由についての判断に資する証拠、すなわち再審請求理由と関連する証拠とすることが合理的であると考えています。
なお、再審請求理由と関連する証拠の範囲は相当の広がりを持つものであり、これを提出命令の対象とすれば、審理に必要かつ十分な証拠が裁判所に提出されることとなると考えています。
制度の運用について御懸念の声があることは承知しており、本法律案が成立した後には、制度の趣旨や内容を十分に周知し、適正な運用の確保に努めてまいります。
再審開始決定に対する不服申立てについてお尋ねがございました。
本法律案におきましては、再審開始決定に対する不服申立てについて原則として禁止し、十分な根拠がある場合に限ってすることができることとしております。その上で、本法律案では、検察官の不服申立てが十分な根拠に基づくものかどうかについて国民がチェックできるようにするため、不服申立ての理由などを遅滞なく公表することとしています。
また、検察官の不服申立てに対しては、基本的に一年以内に裁判所の決定がなされることとなっており、施行後五年ごとの検討条項もあるため、裁判結果も踏まえて、不服申立ての運用について定期的に評価されることとなります。
これらの法整備が行われることで、検察当局においては、再審開始決定に対する不服申立てについて、抗告裁判所の審査に堪え得る客観的に妥当なものかという観点から、組織的に十分な検討を尽くした上で慎重な判断がなされることとなります。
こうしたことから、本法律案が改正法として成立した後は、再審開始決定に対する不服申立ては、より慎重かつ抑制的に行われることとなると考えております。
残余の御質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣平口洋君登壇、拍手〕
○国務大臣(平口洋君) 佐々木雅文議員にお答え申し上げます。
まず、再審請求審における証拠の一覧表の開示についてお尋ねがありました。
御指摘の証拠の一覧表が通常審における証拠の一覧表の交付制度の一覧表と同様のものを想定しているのだとしますと、御指摘のような制度を設けることについては、証拠の提出命令の請求等に際して、そのような一覧表が効果的な場面は限定的であると考えられる一方で、再審請求審の審理の在り方や手続構造との整合性に問題があることから、慎重な検討を有するものと考えています。
その上で、現行法の下では、再審請求審において、裁判所が検察官に対し、その保管証拠中に再審請求者側が求める特定の証拠が存するか否かについての回答を求め、存在する特定の証拠の提出、開示を勧告し、あるいは特定の範囲の証拠の一覧表の提示、提出を勧告するなどの運用の例が見られるところ、こうした運用は、本法律案により証拠の提出命令制度が導入された場合も引き続き可能であり、実際に行われていくこととなるものと考えています。
次に、再審請求審における証拠の目的外使用の禁止についてお尋ねがありました。
通常審において証拠の目的外使用の禁止に係る罰則が適用された事案として、例えば、強制わいせつ事件の被告人であった者が、当該事件の捜査報告書等の内容をインターネット上で閲覧できるようにした事案などがあるものと承知しています。
その上で、証拠の目的外使用による関係者の名誉、プライバシーの侵害等の弊害を確実に防止する必要があることは再審請求審についても同様ですし、裁判所が証拠の目的外使用を懸念して本法律案により新設される証拠の提出命令をちゅうちょし、再審請求審において本来提出されるべき証拠が提出されないこととなるような事態も避けなければなりません。そこで、本法律案では、通常審と同様に、再審請求審においても証拠の目的外使用を禁止した上で、その実効性を担保するため罰則を設けることとしています。
最後に、いわゆる冤罪の再発防止に向けた具体的な対策についてお尋ねがありました。
当然のことながら、罪を犯していない人が処罰されるようなことがあってはならないものと認識しています。
一般論として申し上げれば、検察当局においては、無罪判決等があった場合には、当該事件における捜査・公判活動の問題点を検討し、必要に応じて検察官の間でも問題意識を共有して、反省すべき点については反省し、今後の捜査、公判の教訓としているものと承知しています。
第三者の関与も含め、個別事件の裁判結果を受けた対応の在り方については、まずは検察当局において適切に検討すべきものと考えますが、検察当局においては、過去の再審無罪事件の検証等により明らかとなった反面、反省、教訓も踏まえ、引き続き、基本に忠実な捜査・公判活動の適正な遂行に努めていくことが肝要であると考えています。(拍手)
〔国務大臣あかま二郎君登壇、拍手〕
○国務大臣(あかま二郎君) 佐々木雅文議員の御質問にお答えいたします。
警察における証拠等の管理の在り方についてお尋ねがございました。
警察においては、捜査の結果、作成され又は得られた捜査資料や証拠物件について、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範や関係通達等に基づき、組織的かつ適正に管理しております。
また、警察においては、事件捜査に当たり、平素から検察官と緊密に連携して対応しており、こうした捜査資料や証拠物件のうち、犯罪事実の有無や事案の解明のために必要なものについては、被疑者に有利であるか不利であるかにかかわらず、関係法令に基づき検察官に送致しております。
加えて、警察で保管、管理している捜査資料等についても、検察官から求めがあった場合など必要な場合には、速やかに情報を提供するとともに、検察官に送致しております。
今後とも、捜査手続の適正性に疑義を抱かれることがないよう、警察を指導してまいります。
警察における不適正事案等の再発防止に向けた対策についてお尋ねがありました。
近時、警察の捜査活動について様々な厳しい指摘があることは、私としても重く受け止めております。
その上で、警察捜査は国民の信頼の上に成り立つものであるところ、警察においては、例えば再審無罪判決を受けた事件について、その内容を振り返った上で、教訓とすべきものは教訓として今後の捜査に生かすとともに、各都道府県警察に適正捜査指導官を設置して、法令等の遵守等に関する指導教養を行っております。
今後とも、緻密かつ適正な捜査が徹底されるよう、警察を指導してまいります。(拍手)
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