REPORT
活動報告
第221回国会 参議院 本会議 第15号 令和8年5月22日
○佐々木雅文君 公明党の佐々木雅文です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました防災庁設置法案及び防災庁設置法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして質疑を行います。
私たち公明党は、十五年前の東日本大震災発生以来、憲法に定められた幸福追求権と生存権に基づき、いかなる災害も強い決意と持続する意思があれば復興できるとの信念で、地方議員、国会議員が力を合わせて人間の復興に取り組んできました。
復興は、風評と風化、二つの風との戦いです。風評に対峙し、風化にあらがうために、政治には法律と組織を整える使命があります。
公明党は、被災地の生の声を聞き、防災・減災を政治、社会の主流にと長年訴え、防災庁の設置も一貫して主張してきました。防災庁の設置はゴールではなく、これからの課題解決に向けた出発点です。私自身、この二か月の間で、原発事故を含む東日本大震災の被災地域である福島、宮城、岩手や、山林火災が起きた大槌町、能登半島地震の被災地域である石川の状況を直接見て、聞いてきました。
そうした視点から、具体的な質問を行います。
防災庁は、大規模災害に対する事前防災を推進することとなっています。災害発生後に、救えなかった命という言葉をなくしていかなければなりません。今こそ、事前防災に注力するときです。
特に、今後三十年以内に発生する確率が六〇%から九〇%程度以上となっている南海トラフ巨大地震は、甚大な被害が想定されており、喫緊の課題として事前に被害を最小化していくための備えが必要です。
この点、二〇一二年に公表された南海トラフ巨大地震被害による想定死者数は三十二万三千人です。それを踏まえ、二〇一四年三月に策定された南海トラフ地震防災対策推進基本計画では、当初十年間の減災目標として、想定されている死者数をおおむね八割減少させることが目標とされました。しかし、昨年、二〇二五年に公表された想定死者数は二十九万八千人です。つまり、八%の減少にとどまっています。
昨年改定された防災対策推進基本計画においても、改めて、今後十年間で死者数をおおむね八割減少させることが引き続きの目標となっています。
まさに、この十年間が勝負です。その他の災害と含めて、様々な知見や手段を活用し、あらゆる連携を強化して国民の命を守らなければなりません。
その一つである南海トラフ巨大地震の死者数減少の目標達成に向けて、国が防災庁を設置する中で、事前防災にどのように本気で動いていくのか、高市総理の認識と決意を伺います。
これまでも、政府や各機関が防災に取り組んできたこと自体は否定するものではありません。実際に、国や各自治体を始め、各団体や企業の取組もあり、防災への知識やハザードマップなどは一定程度普及してきました。
他方で、家具などの転倒防止実施率は三六%、通電が復帰した際に生じる火災を防ぐための感震ブレーカーの設置率は八・五%にとどまっています。これらの対策を一〇〇%にすること、また、津波発災後十分で避難開始できれば、死者数を大きく減少させることができます。
政府としても、これらの対策が早期に果たされるよう、自治体や個人に対する経済的な面も含めて支援を拡充すべきですが、それだけでなく、防災・減災のための行動に実際に結び付かなければ、現状を変えられません。
行動変容を起こしていくためには、正しい情報を提供することだけにとどまらず、具体的な介入を伴う仕組みをつくることが有意義です。
そうした行動変容の一つの態様として、防災分野の特性を十分踏まえた上で、ヘルスコミュニケーション学の手法を防災に取り入れ、体系的に展開するといった、公衆衛生的アプローチを行うことがあり得ます。
例えば、地域住民と直接接する機会が多い民生委員や地域包括支援センター、社会福祉協議会などの福祉職の方々を始め、災害直接死を防ぐための具体的方法を声掛けする人材を養成することや、事前防災に関する業務などを個別法に根拠として規定するなどの法的整備、マスメディアの協力も得ながら、啓発コンテンツの発信などを通して、事前防災に資する行動をすることが当然であるという意識の醸成と行動変容への具体的取組が考えられます。
徹底した事前防災を実現するために、政府はどのような行動変容に取り組むべきと考えているのか、高市総理の所見を伺います。
次に、災害発生後の対応について伺います。
災害が発生すると、災害対策基本法に基づき、復旧復興は基礎自治体である市町村が担います。しかし、市町村の規模を十分に勘案されないままに担い手の当事者となることが大きな負担になっています。また、当該自治体の職員は、被災者であるにもかかわらず、必ずしも専門的な知識を持っていない中で対応に追われることとなります。こうした基礎自治体への責任の過度な偏重が、復旧復興を遅らせる要因になりかねません。他方では、一定の時期が過ぎ、被災地域の民間団体などが復興に向けた活動を行おうとする際に基礎自治体が十分に対応できないとすれば、一層時間が掛かることを余儀なくされます。
防災庁は、発災時の対応から復旧復興までの一貫した災害対応の司令塔となることを目的としています。そうであるならば、基礎自治体任せにするのではなく、防災庁が最後まで責任を持って関わり続ける体制を構築すべきです。ふるさと防災職員の創設はその端緒だと思いますが、検討されている防災大学校において自治体の職員も含め人材育成を行う中で、最後まで伴走する体制もつくる必要があります。
被災地域の職員の負担を軽減すること、そして、単に国と市町村、都道府県の連携を行うだけでなく、災害発災、発生時から復興段階まで積極的に主体的に関わるために、複数で取り組むことができる組織を各市町村単位で設置することが有益であると考えますが、高市総理の所見を伺います。
避難所の在り方については、スフィア基準が念頭に置かれるようになり、トイレ、キッチン、ベッドなどに対する認識が変わりつつあります。しかし、財政的な問題もあり、基準に沿った避難所運営が十分果たされているとは限りません。
例えば、避難先の体育館の中で世帯ごとにパーテーションで区切られた場所が設けられたとしても、その背が低く、上から容易にのぞかれるような形状ですと、十分なプライバシーが確保されません。そうしたことへの忌避感から、結局、車中泊を選ぶということが生じます。そうすると、健康リスクが大きくなりかねません。
個人の尊厳が確保される避難所運営が必要です。その自治体で有していなくとも、近隣含め被災していない地域の備品等を円滑に融通することなど、でき得る支援が可能となるような体制の充実化も検討すべきです。また、知的障害をお持ちの方や高齢者を始め、避難困難者のための避難相談を受け付けたり指示をしたりする指令機能を自治体に設置することも検討すべきです。
良好な生活環境の確保という点からも、プライバシーへの配慮を十分に取り入れるとともに、避難困難者に寄り添った避難所運営を目指すべきと考えますが、高市総理の所見を伺います。
高市総理は、施政方針演説において、福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なしと述べられました。是非、力強い支援をお願いしたいと思います。
その上で、防災庁が設置に向けて進む中で、復興庁の設置期限が二〇三〇年度末となっています。五月九日、十日には、公明党東日本大震災復興加速化本部として浜通り各地に伺いました。地震、津波と原発事故という複合災害からの復興には、まだ長い時間を要します。これまで復興庁が果たしてきた役割、知見は防災庁にしっかりと引き継がれなければなりませんし、地元の皆様の思いにも応えていかなければなりません。
今後への心配や不安を払拭し、引き続き国が責任を持って福島復興を果たしていくこと、改めて高市総理の御決意を伺います。
冒頭にも申し上げましたとおり、公明党は人間の復興を掲げています。今も苦しむ人々が希望を持って前を向くことができるその日まで、私たちは寄り添い続けていくとともに、今後も発生する災害から国民の命と暮らしを守り抜くことをお誓いし、質疑を終わります。
御清聴いただき、誠にありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣高市早苗君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(高市早苗君) 佐々木雅文議員の御質問にお答えいたします。
南海トラフ地震における死者数減少の目標達成に向けた事前防災についてお尋ねがありました。
南海トラフ地震による被害を最大限減らしていくためには、平時からの徹底した事前防災が重要です。
防災庁では、尊重義務付きの勧告権も背景に、昨年変更した基本計画の各施策について定期的にフォローアップを行い、その着実な実施を図ってまいります。また、地域レベルでの災害リスク評価を行い、地方公共団体において必要な取組が進められるよう、伴走支援を行ってまいります。
防災庁が司令塔となって、産官学民の総力を結集して、南海トラフ地震を始めとして徹底した事前防災に政府一丸となって取り組んでまいります。
事前防災における行動変容に向けた取組についてお尋ねがありました。
徹底した事前防災においては、国民の皆様お一人お一人の行動変容を促していくことが重要です。議員御指摘のとおり、地域住民の皆様に接する機会の多い保健福祉分野の人材を活用したアプローチは有効だと考えます。
厚生労働省では、自治体の職員を対象とした会議の開催や取組事例の共有、事前防災に関するリーフレットの活用などにより、保健医療福祉分野に携わる自治体の職員が事前防災に関する知見の蓄積を図るための取組を進めています。
また、行動変容を実現するためには、コミュニケーションの観点も踏まえたアプローチが重要であるということも議員御指摘のとおりだと考えております。
内閣府における健康に関する公衆衛生分野の取組において、行動変容を促すための総合的、戦略的なコミュニケーションデザインの検討を進めておりますが、防災庁設置後は、そうしたコミュニケーションの観点を取り入れることも含め、本日議員からいただきました様々な御提案も踏まえながら、国民の皆様の行動変容につながる取組を進めてまいります。
防災庁における基礎自治体への支援体制についてお尋ねがありました。
災害対応は、一次的には住民に近く地域のことをよく知る市町村が担いつつも、都道府県や国が市町村を支え、必要に応じて直接対応することが適切と考えます。
基礎自治体への支援体制を強化するため、防災庁には、新たに地域防災を担う統括官を配置するほか、四十七都道府県のカウンターパートとなるふるさと防災職員や地方機関である防災局を置くなど、抜本的な体制の強化を行うこととしています。また、仮称ではありますが、防災大学校の設置の検討を進め、基礎自治体の職員を含め、災害対応、復旧復興を担う官民の人材育成、確保も図ってまいります。今回の法案には、災害対策基本法の改正により被災地での復旧復興本部の設置も盛り込まれています。
こうした様々な仕組みを活用し、広域自治体である都道府県ともよく連携しながら、平時はもちろんのこと、発災時から復旧復興まで、基礎自治体のニーズを踏まえ、最後まで伴走支援する体制を構築してまいります。
避難所の在り方についてお尋ねがありました。
災害関連死を減らし、発災直後から尊厳ある生活を営むことができるようにするためには避難所の環境整備が重要ですが、自治体によっては、財政面の制約から避難所に備蓄品、資機材が十分でないなどの課題があることは議員御指摘のとおりです。
政府としては、防災力強化総合交付金により、自治体における資機材の整備を支援するとともに、避難所の質の向上に配慮した訓練を行うことなどによりその取組を支援しているほか、簡易トイレやキッチン資機材など、調達に一定の時間を要するものを中心に全国に分散して国の備蓄を進めるなどの取組も行っています。
また、高齢者や障害者などの避難困難者の方に関しては、各市町村において災害が発生するおそれが高まった場合に、警戒レベル三、すなわち高齢者等避難を発令し、避難に時間を要する方の避難を促しています。さらに、避難所だけではなく、在宅避難者についても戸別訪問を行うなどして、被災者お一人お一人のニーズに即した避難生活を支援しています。
防災庁設置後におきましても、関係省庁と連携し、スフィア基準を踏まえた避難生活環境の実現に向けた取組を進めてまいります。
今後の福島の復興についてお尋ねがありました。
福島においては、復興の歩みは着実に進んできましたが、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や除去土壌等の県外最終処分に向けた取組、避難指示解除に向けた取組など、中長期的な対応が必要です。引き続き、国が前面に立って取り組んでいく決意でございます。(拍手)
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