REPORT

活動報告

災害対策及び東日本大震災復興特別委員会 ○災害及び東日本大震災復興の総合的対策樹立に関する調査(災害に係る基本施策に関する件)(東日本大震災復興の基本施策に関する件)について質疑 議事録

第221回国会 参議院 災害対策及び東日本大震災復興特別委員会 第4号 令和8年5月8日

○佐々木雅文君 公明党の佐々木雅文でございます。
 私からも、先般の大槌町に発生しました山林火災につきまして、被災をされた方、また避難を余儀なくされた方々に心よりのお見舞いを申し上げます。
 今年の三月十一日で東日本大震災から十五年となりました。この大震災で得た知見、経験、今後想定されている大規模地震の対策に生かしていかなければならないところです。
 その中でも、特に南海トラフ地震は、今後三十年以内に発生する確率八〇%となっておりまして、喫緊の課題であります。その目標数値についてお尋ねをしたいと思いますが、お手元の資料、右肩資料①を御覧いただければと思います。
 左側が平成二十六年三月、右側が令和七年七月のそれぞれ中央防災会議における資料でありますけれども、二〇一二年に公表されました南海トラフ地震被害、想定死者数三十三万二千人です。それを踏まえてこの平成二十六年三月に策定された推進基本計画では、当初、十年間の減災目標として、想定されている死者数をおおむね八割減少させることが目標とされています。しかし、二〇二五年、令和七年に公表された想定死者数、ここでは約二十九万八千人と記載をされていて、つまり、十年前の目標八割となっていたところが、八%の減少にとどまっているスタートになっています。
 当初八割減少させる目標が八%にとどまっていることについて、これは国としてどのように受け止め、原因を分析されているのか、所見を伺います。
○政府参考人(鎌原宜文君) お答え申し上げます。
 二〇二五年三月に公表しました南海トラフ地震に関する国の最新の被害想定では、先ほど委員からも御紹介がございましたが、最大死者数は約二十九万八千人とされておりまして、さきの基本計画で掲げていた死者数を十年間でおおむね八割減少させるとの減災目標は達成には至りませんでした。
 この要因につきましては様々あると考えており、例えば、住宅の耐震化や家具の固定の取組が想定していたほど進まなかったことや、死者数の約七割を占める津波による被害に関しまして、浸水想定の精緻化の結果、浸水面積が増えたことなども影響していると考えております。また、津波被害の軽減のためには早期避難が何よりも重要となりますが、最悪を想定するとの方針の下、住民の早期避難率について、過去災害の実績を参考に、前回と同じ厳しい値を用いて最大死者数を推計をしたというようなこともあろうかと思っております。
 いずれにしましても、南海トラフ地震では、引き続き、甚大な被害の発生が想定をされておりますので、フォローアップの強化などによりまして、これまで以上に各種対策の着実な推進を図るとともに、津波からの早期避難を促進するための普及啓発や訓練の実施などに一層取り組んでまいりたいと考えております。
○佐々木雅文君 今お話ありましたとおり、この目標を達成していかなければならないと思います。
 今、この防災庁の議論も始まりますが、その中の具体的な事務の一つとして、大規模災害に対する事前防災の推進が掲げられています。これまでも国やまた各自治体の皆さん、企業、団体の皆さんも取り組んでいただいた結果、この防災への知識であったりとかハザードマップは、これ一定程度普及してきたところかと思います。また、災害発生後の避難所運営計画、備蓄等を進めることも大事です。
 その上で、今後大切な観点は、事前に被害を最小化していくための備えを行っていくことだと思います。今後も何らかの災害が生じることはもう既に予測があるわけですので、だからこそ、災害後の対策とともに、災害が起こる前に必要な備えを進めて、災害発生後に救えなかった命という言葉をなくしていくための事前防災こそが必要になるものだと思います。
 具体的な観点としては、一つに目標、二つに対策、三つに備えの三つのポイントで考えていくことが有益だと思います。この目標というのは災害による死亡者数の大幅な削減、対策というのは災害による死亡原因の特定、そして死亡原因に対応した備えを行っていくことだと思います。
 資料②を御覧いただければと思いますが、これは東北大学の災害科学国際研究所の前所長の栗山先生がおまとめになったものを踏まえたものですが、過去の大震災を例に挙げますと、関東大震災では十万五千人の方がお亡くなりになりましたが、その八七%が火災が原因、阪神大震災では、約六千四百人の方が亡くなられたうち建物倒壊による頭部損傷等が死因の八三%、そして東日本大震災では、一万六千人の死者のうち九〇%が溺死となっています。
 このことを踏まえ、想定される南海トラフ大地震防災対策、どのように想定されているかというのが資料③になるわけですけれども、例えば耐震化率、現状平均九〇%、これが一〇〇%になれば死者数は七七%減、家具などの転倒防止率、今三六%、これが一〇〇%になれば死者数六六%減、火災、これは主に通電復帰後、復帰した際に生じるものですけれども、これも感震ブレーカー、今八・五%設置率、これが一〇〇%になれば死者数が五二%減、津波は発災後十分で避難開始できれば約六六%の死者数減ということが可能と考えられます。
 政府としましても、こうした対策、早期に果たされるように自治体や個人に対する支援、経済的な面も含めて進めるべきだと思いますが、具体的な現状の対策、所見、それぞれ耐震化率、家具防止転倒実施率、感震ブレーカーの設置、津波避難対策、それぞれ四点について伺いたいと思います。
○政府参考人(鎌原宜文君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、事前防災の取組は重要と認識をしておりまして、内閣府防災担当におきましては、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、首都直下地震、南海トラフ地震、それぞれに係る地震防災対策の基本計画を策定し、各省庁と連携し、対策を進めております。
 お尋ねのあった、まず住宅の耐震化率につきましては、令和五年時点で全国で約九〇%となってございます。耐震性が不十分な住宅、建築物に対しまして、補助制度などの周知や活用促進によります耐震診断、耐震改修及び建て替えなどの耐震化を進めていくこととしております。
 家具の固定率につきましては令和七年度時点で全国で約三八%にとどまっており、ウェブサイト、パンフレット、SNSなどの活用などを通じまして、家具の固定の必要性について周知をしていくこととしております。
 また、感震ブレーカーの設置率につきましては令和六年時点で首都圏で約二〇%にとどまっており、更なる普及啓発を図るほか、著しく危険な密集市街地を有する地方公共団体に対する感震ブレーカーの購入、取付けに係る補助といった取組を進めていくこととしております。
 津波避難対策につきましては、想定死者数を減少させるためには早期避難意識の向上が不可欠であります。津波防災訓練の実施や防災教育の推進、関係者と連携した広報や周知活動に取り組むこととしております。
 いずれも想定される被害の軽減のためには重要な取組でありますことから、内閣府防災担当としましては、各省庁の施策の進捗状況や課題の共有などのフォローアップを定期的に実施をしていくほか、地方公共団体などに対しまして情報提供や助言を行ってまいりたいと考えております。
○佐々木雅文君 今お話がございました現状を踏まえて、目標を達成していくためには周知啓発が大切なわけですけれども、例えば耐震化率、今九〇%というお話ありましたが、資料④を御覧いただきますと、全国平均では実は結構まちまちになっていまして、地域ごとによって大きな差が生じているというのも現状であります。
 こうしたことや、今普及啓発というお話もありましたが、知識が行動に結び付いていないという現状を変えなければならないと思います。国交省のホームページでも、例えば住宅の所有者に対して耐震化を呼びかけをされているところであります。ただ、行動変容を起こしていくためには、こうした正しい情報を提供するだけにとどまらずに、具体的な介入を伴う仕組みをつくることが必要だと思いますし、そうした制度設計に転換することが求められると思います。
 その一つの示唆として、先ほどもお話しした栗山先生が御専門とされている一つとして、行動変容の一つの対応として、公衆衛生的アプローチという方法があり得ると思います。例えば、これまで国は、健康増進政策として減塩や禁煙を掲げて、広報、教育、税体系を含めて対策をして、食塩摂取量、喫煙率を低下させる、こうしたことを実現してきました。こうしたヘルスコミュニケーション学は既に確立をしている状況なわけでございまして、その上で防災分野の特性を踏まえた対策を考えるというふうなこともあり得るのではないかと思います。
 現状、国として行動変容を起こすためのこうした公衆衛生的アプローチ、取組が既になされているものがあるのかどうか、そうした点を伺いたいと思います。
○政府参考人(榊原毅君) お答え申し上げます。
 地震等の災害が発生した場合に備え、平時から防災意識を高めるための取組を進めていくことは重要であると考えております。
 例えば、自治体において、平時から災害に備えた行動変容を促す取組として、災害への備えに関するリーフレットを用いた保健師による家庭訪問、健康教育等の様々な機会を通じた普及啓発や、避難行動要支援者に対し、本人、家族の状況把握、非常持ち出し品、食料備蓄、家財の転倒防止策等の確認を行い、対象者に合わせた必要な情報提供などを行っていると承知しているところでございます。
 また、厚生労働省においても、毎年、自治体の保健師等を対象とした健康危機における保健活動推進会議を開催しまして、これらの取組事例を紹介したり保健活動の中で活用できる事前防災に関するリーフレットを共有するなど、防災に関する情報提供を行っているところでございます。
○佐々木雅文君 今もお話にありましたとおり、これ、保健師さんや看護師さんなど福祉職に就かれている方々は各家庭の事情もよく承知されていらっしゃる中で、そうした普及啓発を更に上回る介入をしていく中で、例えば感震ブレーカーの設置であったりとか耐震、家具の固定を進めていくような、そうした具体的な防災行動提案も可能になっていくかと思います。これは、今後また機会を改めて聞かせていただきたいと思います。
 最後に、この人命をなくすリスク最小限にしていくためにも、今申し上げたような事前防災の取組、より一層必要であることは論をまちません。防災庁にはこうした徹底的な事前防災の推進、加速の司令塔としての役割が求められているところであります。
 先ほどもほかの先生からもありましたが、勧告権付与されているものの、その実効性も不安視をされているところでもあります。当然、この勧告権が実施される前に、省庁との連携、功を奏すれば問題ありませんが、事前防災に対する積極的な施策を立案、実施することが必要不可欠であるところです。
 リーダーシップを発揮できる防災庁体制を整えていただきたいと思いますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(牧野たかお君) お答えをさせていただきます。
 佐々木委員がおっしゃっているとおり、平時から徹底した事前防災を行うことが大事だというふうに思っております。
 このため、想定しております防災庁では、防災大臣が、尊重義務付きの勧告権を背景に、各種の計画における各府省庁の個別具体の施策の進捗状況について適時フォローアップを行っていきます。例えば南海トラフ地震で被害が予想される地域で地域レベルでのシミュレーションを行って、すぐに対策が求められるような部分が明らかになった場合には、客観的根拠に基づいて具体的に必要な事前防災対策の実施や支援を、防災庁から関係省庁に勧告権を背景に強力に求めていくことなどを想定しております。
 防災庁におきましては、四名の統括官、局長クラスでありますけれども、を配置することによって人員と予算を拡充して、それぞれ施策を推進していくとともに、内閣直下に置かれる防災の上では一段高い省庁として、司令塔となって政府一丸で災害対応に臨む体制を指揮、司令塔として機能を発揮していくことを考えております。
○佐々木雅文君 以上で終わります。ありがとうございました。